TOMOS リモートワークに徹する
1R(25.23㎡)
「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞きます。
団地家の吉永健一さん、今月は、エレベーターもばっちりついている、高層団地について教えてもらいました。スペースもゆったり、それにかっこいい!ちょっと住んでみたくなる団地が揃ってます。
text & photo : Kenichi Yoshinaga
団地というと5階建の建物をイメージされることが多いと思います。
暮らしよさそうだけど、階段の上り下りはつらそうだわぁと団地暮らしを選択肢から外している人もいるかもしれません。
今回はそんな方におすすめしたい高層団地のお話をしましょう。
実は、団地は中層と呼ばれる5階建てだけではなく、10階建て、20階建ての高層もあるのです。高層団地にはもちろんエレベーターが備えられています。
では、マンションと同じかというとやはりそこは団地。マンションと比べて緑環境は充実し、ゆったりとしています。
たとえば、横浜の南神大寺団地は。長大な建物で大きく囲った中庭が魅力です。このゆったり感は民間のマンションではなかなか味わえないもの。敷地を十分取っている団地ならではでしょう。団地特有の飾り気のなさも、高層であってもキープされています。
エレベーター付がいいけど、ゆるくシンプルに暮らしたいという人にうってつけなのが高層団地なのです。
また、高層団地には中層の団地にはないメリットがあります。
高さが高い分、建物の間隔がより広く取られています。お向かいの視線が気になるわ、という人にはちょうどいいですね。
そして、その広さを活かしてがっつりとオープンスペースが設けられています。森のような公園だったり、大勢が集まるイベントができる広場だったり。
大阪の千島団地ではこの広場を利用してDIYイベントが開催されました。たくさんの出展ブースがあってもたくさんお客さんが来ても受け入れられる懐の深さには驚かされます。
高層団地は、郊外よりは都市の中心に近いところに建っていることがしばしば。生活に必要なお店や施設が近くにあるので郊外に比べると便利です。駅に隣接して建てられている例もあります。
例えば、千里ニュータウンの千里桃山市街地住宅は、ほぼ駅の真上に建っているといっても過言ではありません。駅まで徒歩0分。梅田までならドアツードアで1時間以内に通勤できるのはとても魅力です。
上が住宅、下がお店になっていることが多いです。忙しくて買い物に行く時間がない方や高齢の方にとって、飲食店、病院、スーパー、コンビニなどが足元あることはありがたいことでしょう。
板橋区の高島平団地足元にはスーパーの他、八百屋や魚屋が並びその品揃えは街の商店街に引けをとりません。
中層の団地が並ぶ中にアクセント的に建っている場合は、周りに高い建物がないので窓からの眺めが良好です。タワーマンションに負けず劣らずの絶景が楽しめます。
南神大寺団地など、横浜の高台に建つ高層団地では、ベイブリッジが眺められるようです。
中層の団地は、標準設計という規格で一律につくられていますが、高層団地はこの規格外の扱いのことが多く、自由に設計ができます。そのためオリジナリティーにあふれる団地が生まれてきます。
千里ニュータウンの高層団地である、千里竹見台団地、千里青山台団地はその際たるものです。
千里竹見台団地(トップ画像の団地)はレアなスターハウスの中でも高層というさらにレアなもの。
千里青山台団地は、その曲線を描く外観からから日本でもっとも優美な高層団地と呼ばれています。
住吉団地はそのごつごつした外観から団地愛好家からガンダム団地と呼ばれて親しまれています。
便利でかっこよくて、団地らしい緑とゆったり感があるとなるとこれは住まいの選択肢から外すわけにはいかないでしょう。その迫力とゆったり感をぜひ実物で実感してみてください。
吉永健一
吉永健一
団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。