TOMOS リモートワークに徹する
1R(25.23㎡)
「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞きます。
”団地家”の吉永健一さん、今回は、同じ団地の「リノベーション後のお部屋、前のお部屋」を比較して紹介してくれました。団地は築年数が経っていても、内装は丁寧にメンテナンスされていくんですね。
text & photo : Kenichi Yoshinaga
リノベーションされた団地に住みたいという相談がよく来ます。
しかし、リノベーションした部屋は人気が高く、空きも出ないので入居は難しいものがあります。
家賃が高めだったり、元は空きがちな条件の部屋(最上階など)の場合もあり、それで団地に住むことをあきらめる人もいます。そのたびに、「リノベーションしていない団地も結構いいのに、もったいないな」と思っています。
リノベーションする前の団地がどのようなものなのか、リノベーションすることでどれくらい変わっているのかは知られていないこともその一因かもしれません。そんなことが気になったので、今回はリノベ団地のビフォーアフターについてお話していきたいと思います。
URの団地、東豊中第2団地にはMUJIとUR都市機構がコラボレーションして話題になった団地リノベーション MUJI×UR のお部屋があります。
MUJI×UR の部屋とその元となった間取りと同じ部屋を比べてみましょう。
まずはリノベーション後のお部屋ー MUJI×UR から。
MUJIらしい飾らないけど爽やかな豊かさを感じる空間になっています。特にステキなのはダイニングキッチンです。南側に面するようにキッチンシンクが設けられているのでとても明るい。外の景色を眺めながらの料理というのも楽しそうです。トイレ、洗面、浴室もあたらしいものに入れ替えられています。
次にリノベーションしていないオリジナルのままのお部屋を見てましょう。
和室や欄間があってちょっと懐かしさが漂いますね。
先に見たMUJI×URの改装前の間取りを左右反転させたものと同じで、ダイニングキッチンも同じく南側の部屋にあります。
南側に面する窓際にキッチンシンクが設けられているのでこちらも明るい。物干しを考えるとキッチンからすぐバルコニーに出られるのは便利そうです。
ダイニングキッチンと和室の間には襖がありますが開け放てばリビングダイニングキッチンとして使えます。間取りは昔のままですがキッチン、トイレ、洗面、浴室もあたらしいものに入れ替えられています。
ここまで見ると「MUJI×URとあまり変わらないのでは」と思われる方もいるかもしれません。それはMUJIの目指す「シンプルで豊かな暮らし」が元々団地が目指していたことでもあるからです。そのためリノベーションしていなくてもどことなく似ているのです。
また「内装が想像したよりきれい」「設備がリノベーションしたものと変わらない」と驚かれた方もいると思います。“昔のまま”と聞くとみなさんがイメージするのは下の写真のようなお部屋と思われます。MUJI×UR以前に改装前としてこのレベルの部屋がテレビにでていたことがありましたが、おそらく完成当時から住人が入れ替わらず今まで改装できなかった部屋だったのでしょう。URでは住人が入れ替わるたびに内装のメンテナンスをしています。その時代に合わせて仕上げ、設備も入れ替えています。築50年であっても50年前のままということはないのです。
間取りが昔のままということは、今風の暮らしができないのではと思う方もいるかもしれません。
しかし、リノベーションしていなくても工夫次第でおしゃれに住むことはできます。ちなみにトップ画像はリノベーションしていないお部屋です。照明や家具のしつらえで十分おしゃれに住むことはできるのです。リノベーションしていない普通の部屋も一度のぞいてみてください。そこに求めていた部屋があるかもしれませんよ。
吉永健一
吉永健一
団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。