お餅に付けるのは
1K(24.48㎡)
町歩き愛好家が本当に住みたい町をジワジワと紹介していきます。第3回目に取り上げるのは西東京市のひばりが丘。ずっと残していきたくなる風景がそこにはありました。
text : 渡辺平日
こんにちは、日用品&町歩き愛好家の渡辺平日です。この連載では、個人的に好きな町や住みたい町を、商店街を中心にじっくりと這うように案内しています。
今回取り上げるのは西東京市のひばりが丘。物の本によると、かつてひばりが数多く生息していたことが地名の由来になったのだとか。
いきなり現実的な話になってしまって恐縮ですが、住むお部屋を決めるとき、職場への移動時間は最重要ポイントになりますよね。今回案内するひばりが丘の交通事情はどうでしょうか?
ひばりヶ丘駅では西武池袋線が利用可能。西武池袋線は副都心線や東急東横線、みなとみらい線など様々な路線に乗り入れているため、新宿や渋谷などの主要都市へ最短30分程度でアクセスできます。また、一時間程度かかりますが、横浜方面にも乗り換え無しで行けますので、お休みの日は中華街へお出かけというのも良さそうですよ。
交通利便性はまずまずといったところ。さて、次に気になるのは町の様子ではないでしょうか。ひばりが丘は駅周辺がかなり盛り上がっているので、まずはその辺りを散策してみます。
駅周辺だけを見ると完全に〈街〉でしたね。普段のお買い物には不便しそうにありません。しかし、これはひばりが丘のほんの一面に過ぎません。次は、僕が好きな北口側を案内します。
老舗の喫茶店があると聞いて向かってみましたが、なんと、残念ながら閉店していました……。ほぼ下調べ無しで取材に来ているので、他のお店の候補もありません。
軽く買い物をするつもりだったのに、すっかり話し込んでしまいました。これが無計画な町歩きの醍醐味だったりします。会話の中で、このお店の歴史も教えてもらいました。この精肉店ができたのは今から約半世紀前。それからずっと、この地域の台所を支えてきたそうです。三代で通っている常連さんもいて、住民に愛されているお店なんだなあと感じました。そして、(ずっと、この風景が残っていけばいいのに)と、心から思いました。
「お兄さんと出会えてよかったよ。お店も長く続けるものね。また、この町に来てね」
お店を出るとき、お母さんが笑顔でそう言いました。うまく言葉にできませんが、なにか大事なものを受け取ったような、そんな気がします。
すっかりお腹が膨れたところで、ちょっと寄り道することにしましょう。駅の近くにちょっと面白い図書館があるので、ぜひ紹介させてください。
図書館で本を借りて、公園でゆっくり読書するのも良さそうですね。さてさて、ひばりが丘の良いところをしっかりお伝えできたかと思いますので、お楽しみのお部屋紹介コーナーに移らせていただきます。
……取材が終わったあと、精肉店のお母さんから「受け取ったもの」について思いを巡らせました。
もしかしたらそれは「バトン」のようなものかもしれません。時代の流れとともに町は移ろい、その風景はどんどん変わっていきます。誰にもそれを止めることはできません。でも、次の世代にバトンを託すことはできます。それを渡す人がいて、それを受け取る人がいる限り、町がどれだけ変わっても大切なものは残り続ける。少なくとも僕はそう信じています。
残したい風景があるこの町で、バトンを受け取ってみませんか?
渡辺平日
渡辺平日
日用品愛好者。常に異常な物欲と戦っています。町歩きやお部屋探しも好きで、ふと気がついたらグッドルームの取材ライターになっていました。主な寄稿先は「LaLa Begin」「北欧、暮らしの道具店」「PERFECT DAY」など。