賃貸における窮屈な縛りからの解放。ホテル暮らしがもたらしたのは、想像以上の自由だった
コロナ禍になりリモートワークが当たり前になったことで、今がチャンスとホテル暮らしを始めて1年半。賃貸をやめるという、勇気ある大きな決断をしたNさんにとって、得られたものは想像以上に大きなものでした。今では「ストレスがなくて不安になるほど」と話すNさんにもたらされた、変化や考え方などについて聞いてみました。 …
新しい暮らし方を実践している方々に話を伺うインタビュー企画。第8回はgoodroomの新サービス「goodroomホテルパス」のアンバサダー制度を利用して、新橋にあるホテルに1週間滞在したミニマリストのUさんに話を伺いました。
text : ASAKO SAKURAI
ホテル暮らしって、どんな人が向いているのだろう?
ふと、そんな疑問が頭をよぎりました。
もし、私だったら。ホテル暮らしにいざ興味をもったとしても、「いま部屋にある荷物はどうしたらいいのだろう?」「持ち運びたいものが多すぎて、トランクに入りきらない……」なんてことで頭がいっぱいになり、重たい腰が上がらなそう。どれだけモノに固執しているのだと愕然とします……。
けれどミニマリストだったら?極力余計なモノを増やさず、余計なことに時間を割かない。そんなイメージのあるミニマリストだったら、ホテルで暮らす生活は適しているのかもしれない、とふと思ったのです。
そこで今回はTwitterのフォロワーが2万人を超えるミニマリスト、Uさんにご協力をいただき、1週間のホテル暮らしを体験していただくことに。
Uさんの1週間の記録と感じたこと、理想の暮らしへの想いを伺いました。
Uさんに宿泊いただいたのは、JR新橋駅から徒歩5分の場所にある「THE BLOSSOM HIBIYA」。港区の街を一望できる、ちょっとリッチで非日常な時間を過ごしたい方に人気のホテルです。
Uさん
「歩いて5分の場所には、緑豊かな日比谷公園があったので、朝に皇居ランなどを楽しんだりしました。有楽町や丸の内にも出やすく、周辺環境にはかなり満足でしたね。
また新橋や日比谷といった、住む場所としてあまり選択しないようなエリアで暮らせることも、ホテル暮らしの醍醐味の一つだと感じました」
普段はテレワークと職場への出勤と、半々のバランスで仕事をしているUさん。ホテル暮らしをしながら、仕事に煮詰まったら散歩へ行き、帰ってきたらまた仕事をする。その繰り返しで過ごしていたのだそう。
とにかく静かに、仕事に集中できる環境であったことも良かったのだとか。
Uさん
「今回宿泊させていただいたホテルでは、“心地よい静寂”を感じられたのが一番良かったです。騒がしくなく、心地よい静けさ。そんな上質な空間や時間を過ごせたことが何よりの価値でした。
広々としたロビーやスタッフの方の接客対応、レストランの空間、ホテルの客室……。他の宿泊者と一緒になることも少なく、どこをとっても静かで落ち着いたホテルでした。どの時間帯でも同じ印象を受けました。
特に景観の良い、広々としたロビーでゆっくりする時間が贅沢でした」
今回の滞在でUさんがホテルに持ち込んだものは、5冊の本、仕事用のiPad、新しいノートとペン、着替え数枚のみ。バックパック一つにおさまる量のものだけで十分だったのだそう。それでも「足りない」と感じることはほとんどなかったといいます。
Uさん
「施設の中には洗濯機からアイロン台、ワイングラスまであり、1週間暮らすのに不便だと感じたことが一度もありませんでした」
「室内の居心地も満足です。十分な広さで、入り込む陽の光も心地よく感じました。またホテル施設に簡易ジムがあるのは嬉しかったですね。普段から習慣にしているジムワークができることは、とてもありがたかったです」
普段からインテリアにこだわった生活をSNSで発信しているUさん。自宅がとても好きな分、寂しいと感じた時間もあったそう。けれど自分が普段は選ばないようなインテリアや雑貨があるホテルは、新鮮な気づきもあったのだとか。
Uさん
「自分が居心地良いと感じるものを、持ち込むことはあえてしませんでした。今回のホテルのような、洗練されたデザインのホテルであれば自宅と同じようにリラックスして過ごすことができたのは良かったですね」
ホテル暮らしをしている間の食事は、街の散策も兼ねて外食することが多かったのだそう。けれど毎日新しいお店を開拓するスタイルよりは、気に入ったお店をいくつか決めて、ルーティンに組み込んでいたというから、Uさんらしい。
Uさん
「よく行っていたのは、ホテルの近所にある『コーヒー&プリン ヘッケルン』さん。朝食にコーヒーをいただいていました。
夜は電車で10分ほどの場所にある『The Blind Donkey』さんへ。日本全国の美味しい野菜を丁寧に調理してくださって、ワインとのペアリングが楽しめます。4品のみのコース料理ですが、それで十分。野菜の美味しさとペアリングが絶妙で、とても心が満たされました。ホテル暮らしの体験が終わった、これから先も通い続けたいと思っています」
自宅にいたときも、ホテルにいるときも。基本的にはルーティンをしっかり決めて、それをただこなす日々を送りたいと教えてくれたUさん。なぜ、ルーティン化することにこだわるのでしょう。
Uさん
「選択することって、すごく贅沢なことで、同時にとても疲れる行為なんです。だから私は、決められたことをきちんとやっている方が好き。
むしろホテル暮らしを始めてみて、もっともっと省けることがあるな、と気づきました。所有しているモノにしても、時間の使い方にしても。『これって自分に必要のないことだ』と気づくことができたのは、面白い発見でした」
自分の生活に必要な、決められたルーティンをこなすことで、余計な時間を削って効率よく暮らすことを大切にしているUさん。それは決して寂しいことではなく、むしろ生活を豊かにしてくれるものだといいます。
Uさん
「私の場合は仕事柄、とにかく“考えること”に時間を使います。そこに全ての力を注ぐために、集中できる環境が必要なんです。ホテル暮らしは、とにかく最小限の選択で済むことが多かった。それはものすごく快適なことでした。
一見ルーティンのなかで無駄に見える散歩も、私にとってはアイデアを練ったり、ひらめきを得る時間で、大切なひとときなんですよ」
自分が大切にしていることに照準を当てて生活をしたいとき。そうしたときに、ホテル暮らしは最適かもしれませんね、と教えてくれたUさん。
Uさんは仕事の都合で長期間家を空けることができないものの、考えることに没頭したいときには、今回のように1週間単位でホテル暮らしを楽しむのが合ってる、と話してくれました。
インタビューの最後に、Uさんに何気なく「趣味はなんですか」と聞いたときに返ってきた言葉が印象的でした。そこにUさんの理想の暮らしが詰まっているような気がしたのです。
Uさん
「趣味は『衣食住』ですかね。食事も住まいも、衣類も。どれに特化することなく、きちんと3つとも全ての水準を、無理のない範囲で上げること。そして自分のスタイルにきちんと合うものだけを選び続けて、心を満たすことが趣味なんです。
だから、適当なご飯はあまり食べないし、適当な洋服もあまり着たくない。住まいも適当なインテリアじゃなくて、一つ一つにこだわりたい。生きるために必要な衣食住を、すべて自分の心が満たすものだけ集めるのが趣味です。
だからコンビニのご飯でも、心が満たされればそれでOK。いっぱい食べられてお得をウリにしている食事には心がときめかず、少量でもシェフが本気で考えた食事を頂きたい。そういうことを選んでいきたいです」
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ミニマリストであっても、そうでなくても。
『自分が大切にしていることや時間に集中したい。そのために極力余計なものは省き、効率化して生活をしたい』
そうした考え方の人に、ホテル暮らしの適性を感じたような気がしました。
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櫻井朝子
三宅朝子
goodroom journal 編集部所属。ライター、バーのママなど、いろんなことをしています。行ったことのない街に降り立つととにかく興奮する、街歩き大好き人間。センスがないのでおしゃれなインテリア、お部屋に興味津々。趣味は読書、刺繍、季節の手仕事など。