TOMOS リモートワークに徹する
1R(25.23㎡)
写真家・ライターの大山顕さんに、ちょっとおもしろい撮り方で、無垢床リノベーション「TOMOS」のお部屋と住んでいる人の「平面図」を撮ってもらうシリーズ。
今回は、エンジニアの寺田さんのお部屋に訪問。お休みの日にお伺いしたにもかかわらずピシっとタイ着用でばっちりキメて出迎えてくださった寺田さん。お部屋のあらゆる場所のあらゆるものが、最も使いやすい場所にぴしっと収まっています。
text & photo : Ken OHYAMA
「デザイナーズじゃないのがよかったんです」と寺田さんがおっしゃったのを聞いて、なるほどと思った。寺田さんとは、今回おじゃましたこのかっこいい部屋の主である。
これまで訪問した部屋すべてがかっこいいのだが、寺田さんの部屋には今までと違う何かを感じた。独身男性のお住まいという点ではOさんと同じだが、かの「自分の城」とは異なる雰囲気だ。なんだろうこれ。というか、ぼくが感じたこの雰囲気がまったく写真で伝わらないのがもどかしい。
誤解されるような表現になっちゃうけど、寺田さんの部屋はいわゆる「居心地の良い部屋」ではなかった。これはくさしているのではない。それはもうすごくすてきな部屋だった。しかし「ここはぼくの部屋じゃない」と強烈に感じたのだ。もちろんOさん含めこれまでおじゃましたお宅も「ぼくの部屋」じゃないんだけど、こういう感じ方をしたことはなかった。
「居心地が良い」という表現は他人の部屋をほめる言葉として多用されるが、これはよく考えてみるとすこし変だ。なんとなれば個人の部屋とはそこに住む人のためのものであって、居心地の良さは人によって違うはずだからだ。たぶん寺田さんの部屋は寺田さんに最適化されきっているということなのだと思う。
「居心地の良さ/悪さ」の正体が何なのかは分からないが、それが「部屋のすてきさ」とは関係がないことが分かったのが今回の発見である。あきらかに寺田さんの部屋はすてきだ。きちんとしていてとても感じがいい。憧れる。こんなにすてきなのに「居心地が良くない」(繰り返して申し上げますがこれは悪口じゃないですよ!)のはすごいと思う。乱雑でしっちゃかめっちゃかな部屋が他人にとって居心地が良くないのは当たり前だが。そう、それはぼくの部屋のことだ。しかしぼくの名誉のために言っておくが、ぼくにとっては居心地がよいのである。って、べつにこれ名誉のためになってないか。
お仕事はエンジニアだという寺田さん。本棚には料理の本、キッチンには各種スパイスがとりそろえられていて、傍らにはワインセラー。めずらしいビールの瓶も飾られている。お友達とか呼んで食事したりするんですか? との問いに「そういうことはほとんどないですね」とのこと。なるほど、と思った。つまりこの部屋は完全に寺田さんのものなのだ。お客さんを招くことの多い部屋づくりには他人の視線が盛り込まれ、そのことが住んでいる人に影響を及ぼしたりするが、ここではあくまで寺田さんが「主」で部屋は「従」なのだな。どちらが良いとか悪いとかではなく、人と部屋の関係にはいろいろなパターンがあるということだ。うむ、今回はなんかいろいろ考えさせられる。
ここで思い出したのは昔の間取りには「応接間」があったよなー、ということ。どんなに狭い団地でもお客さんを呼ぶ想定の部屋があった。付随してステレオや革張りのソファなどの「応接セット」というものもあった。飾りの百科事典セットとかね。実際ほんとうにお客さんが来ていたのかはなはだ疑問だけど。現代のお客さんを想定した部屋づくりが難しいのは、リビングがその場になってしまうということだと思う。同じ空間でプライベートと応接を両立しなければならない。
ちなみに、もっと昔だとそもそも家とプライベートという観念の関係自体が現代とは異なっている。夏目漱石の小説などを読むと、主が不在の部屋に上がり込んで帰りを待つ、という描写があったりする。ルイ14世の時代の王侯貴族たちのベッドルームに至っては、そこは謁見と政治の場だったそうだ。寝室がプライベートなものとして他人から見えない領域に引っ込むようになるのは17世紀から18世紀のあいだだという(多木浩二「眼の隠喩」より)。うむ、ほんとうに今回はなんかいろいろ考えさせられるぞ。というか、なんか理屈っぽいかな?
冒頭の「デザイナーズじゃないのがよかったんです」という言葉は、どうしてTOMOSの部屋を選んだのか、という質問に対する寺田さんの答えだ。「自分の世界観とぶつからないですから」と。ふたたびなるほど、と深く頷いた次第だ。「世界観」とはおっしゃるが、とはいえ衒ったところはなく、ふつうにすてきな部屋なのがほんとうにすごい、と改めて思った。
さて、この連載では毎回ある3つの写真を撮っている。ひとつは冒頭の「平面図写真」、もうひとつは最後の「寝っ転がってポートレイト」、そして「集めているものを並べて撮る」だ。今回寺田さんに並べてもらったのは、靴。ポートレイトを見てもらったらわかるが、寺田さんはかなりの洒落者。靴もかっこいいものばかり。そしてやはりきちんとシューキーパーが入れられている。すごい。見習いたい。
いま思うと、この靴を並べてもらったのは実に意味深長だ。なぜなら靴は「持ち主に最適化されたもの」の代表例だからだ。元は市販品だが履いていくうちにその人だけのものになる。その「プライベート感」は洋服ともちょっとちがう。他人の靴は履いても「居心地が悪い」。が、うっとりするぐらいすてきな他人の靴というのはある。寺田さんの部屋はまさにそういうものだった。いやはや、ほんとうに今回の取材は考えさせられたぞ。
大山 顕
写真と文:大山 顕
“ヤバ景” フォトグラファー / ライター。1972年11月3日生まれ。住宅都市整理公団総裁。出版、テレビ出演、イベント主催などを行う。「”ヤバ景”って何?」「”総裁”っておおげさじゃない?」など各種ご興味がわいた方は OHYAMA Ken.com にいってみてください。
Twitter (@sohsai)/Facebook
(最後にもう一度編集部から)
グッドルームのオリジナルリノベーション「TOMOS」のお部屋は、東京・大阪・名古屋・福岡で、毎月10~20部屋登場します。社員も気に入って住んでいる者が多い、無垢フローリングの居心地のよい空間を体験してみてくださいね。
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