もう、賃貸生活には戻れない。サブスくらしで叶えた理想の暮らしとは
新しい暮らし方を実践している方々に話を伺うインタビュー企画。第6回はgoodroomの新サービス「goodroomホテルパス」を利用して都内で長期滞在をして暮らす、ハナダサキコさんです。…
新しい暮らし方を実践している方々に話を伺うインタビュー企画。第4回はgoodroomの新サービス「goodroomホテルパス」のアンバサダー制度を利用して、昨年京都のホテルに1週間滞在した、久保利彩さんに話を伺いました。
text : ASAKO SAKURAI
大手ファッションECサイトで、広報として働く久保利(くぼり)さん。普段は職場に近い、千葉県で一人暮らしをされています。
仕事柄、インプットをする時間をとても大切にしている久保利さん。コロナ前の週末は約1時間かけて電車に乗り、都内で気になる飲食店やアートギャラリーなどを巡っては、感性を刺激していたのだそう。
今回は「goodroomサブスくらし」を活用して、京都河原町にあるホステル「Len Kyoto Kawaramachi」で1週間のホテル暮らしを体験してもらいました。住み慣れていない土地で「旅するように暮らす」こと。もしも自分がホテル暮らしをはじめるなら……。久保利さんが感じたことを聞いてみました。
久保利さんのInstagramに投稿されている写真を見ていると、切り取られた世界がどれも本当に素敵で、惚れ惚れしてしまいます。広々とした室内には雑貨や器、観葉植物が多く、好きなものに囲まれて暮らしているんだなぁという様子が伝わってきます。
そんな久保利さんはホテルでのミニマムな暮らしに、物足りなさを感じることはなかったのでしょうか。
久保利:
想像していたことといい意味で違ったのが、意外とモノが少なくて困ることってないんだな、ということ。今回は1週間という比較的長い期間、自宅を空けることになったのですが、思い切って機内持ち込みができるくらいの、小さなトランク一つで行きました。
普段私の部屋はモノが溢れているのですが、そんなにモノがなくても暮らすことはできるんだということが分かったんです。
でも必要最低限のもので暮らすというのは、決して乏しいものではなくて。必要なものを見極める感覚を育てたり、買い物に慎重になったり。そういう力を養うこともできます。
またホテルで暮らすということは、家具家電や生活消耗品など、身軽に暮らす上で不要なものが生まれるので、節約したい人には案外便利なサービスなのかもしれません。
今回は有給消化期間中の滞在だったため、仕事はたまにしかせず、ゆっくりと時間をかけて京都の街を楽しんだといいます。
久保利:
京都では「旅するように暮らす」ということを体感できました。朝起きたらまず、近所のパン屋さんへ行って、ホテルの共用部で買ってきたパンを温めたり、フリーで飲めるインスタントのコーヒーを飲んだり。
日中は事前にリストアップしていたお店を巡って、疲れたら一度荷物を置きに戻る。そのついでにメールを一本返したりして。お酒を飲むのが好きなので、夜は一人で2軒くらいはしごしながら、地元の方たちとのおしゃべりも楽しむことができました。
私はいろんな場所に行って、自分の五感で体験し、自分がどう感じたかということを、すごく大切にしています。そうやって経験を増やしていき、自分自身の価値観をアップデートしていきたいんです。
だからこそ今回の京都でも、口コミなどを参考にしながらも、できるだけ地元の方に愛されている場所、その土地でしか見られないものにこだわりながら滞在しました。
街を味わい尽くすことは1泊や2泊でできることではありません。ゆっくり時間をかけて滞在することができたのは、すごく良かったなぁと思います。
久保利さんは地元である埼玉を出てから今まで、ずっと一人暮らしをしています。初めて一人暮らしをする人にとっての、ホテル暮らしの良さを教えてくれました。
久保利:
私がLenにいた時は、2日も経てばホテルの方が顔を覚えてくれたんです。出かけるときは「いってらっしゃい」、帰ってきたら「おかえりなさい」と声をかけてくれました。それが決して変な感じではなくて、知らない土地だけど、温かい気持ちを感じたんです。
初めて一人暮らしをするときって、誰しも寂しさや不安があると思います。でもホテルスタッフの方や、共用スペースにいらっしゃる方とのゆるやかなコミュニケーションは、きっと寂しさを紛らせてくれるはず。今は実家に住んでいるけれど、いずれは一人暮らしをしたいという方もいるでしょう。まずはホテル暮らしから試しに始めてみる、というのも気軽にできていいんじゃないでしょうか。
実は掃除や洗濯が苦手で、できることなら家事代行に頼みたいくらい、という久保利さん。ホテル暮らしでは、そういった苦手なことを誰かに代わってもらい、空いた時間を自分のために使えたということに、大きな価値を感じたそう。
久保利:
ホテル暮らしをしてみて、自分が欲しいと思えるものにたどり着くスピードが速いな、と感じたんです。
ホテルでは掃除だけでなく、タオルを替えたり、備品を買い足したり、全部やってもらえますよね。小さなことだけれど、これはすごく利便性が高いサービスだと思っていて。無駄とは言わないけれど、生活の中のカットできる時間があることによって、自分の時間が豊かになるな、と。
例えば、すぐに美味しいコーヒーが飲みたいと思った時。家でももちろん淹れられるけど、人が淹れてくれた美味しいコーヒーが飲みたいと思ったら、電車に乗って、何駅先まで行って、歩いて、ようやく飲める。でもホテルは立地が良い場所にあるのがほとんどですよね。私が泊まったLenでも、1階のラウンジ、さらには徒歩圏内でも朝から開いているコーヒー屋さんがありました。
時間は有限です。効率的になりすぎるのもつまらないけれど、欲しいと思ったものに純粋に向き合える時間が長くなる。それは、とても幸せなことだなぁと思うんです。
今回宿泊したLenは、共用部にしかシャワールームやトイレがなく、多少不便さも感じたといいます。
久保利:
当たり前ですが、部屋がそのまま自分の家、なので外に出るたびに鍵を閉めないといけない。変な話、シャワーのあと、タオル一丁で部屋には戻れない(笑)。一人暮らしをしている自宅と同じように、すべてのことができるわけではないので、オンとオフはしっかりしないといけないと感じました。
でも共用部がかなり充実しているのは、Lenのようなホステルタイプの宿泊施設の魅力です。
1階のラウンジはカフェバーのようなスペースになっているので、人の気配を感じられるのは安心感がありました。キッチンには一通りの調理器具が整っているので、長期滞在の方でお米や調味料を置いていらっしゃる方もいましたね。
ずっとコンビニご飯や外食だと疲れてしまうという方には、こうしたキッチンスペース付きの施設はありがたいと思いますし、ちょっとした料理欲みたいなものも満たせるのではないでしょうか。
ご自身の世界観をしっかり持っている久保利さんにとって、理想の暮らしってなんだろう。是非参考にしたいと思い伺ってみたら、意外な声が返ってきました。
久保利:
私自身も、仕事をリタイアしたら田舎に住みたいなとか、理想の暮らしがないわけではないんです。でも理想の暮らしって、歳を追うごとに変わっていくもの。実家が一軒家だったから、自分も当然そうするものだと思っていたけど、今はそうでもないし。この先どうなるかなんて、誰にも分からないじゃないですか。
だからこそ、どこかに家を借りたり買ったりすること、定住するということにこだわらなくていいんだ、と最近は思います。今回のようなサービスを使いながら、いろんな場所に行って、いろんな価値観に触れて。そうして「じゃあ自分はどうしたらいいんだろう」っていうのを、ゆっくり考えていきたいなぁと思いますね。
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ホテルというと、私たちはどうしても「旅先でただ寝るだけに戻る場所」というイメージを持ちがちです。けれど、長期間滞在することによって見えてくる景色は、こんなにも違うのかと、驚きました。
最小限の設備の中で暮らし、自分にとって何が必要かということに向き合うこと。あらゆる面倒な家事から解放され、自分が豊かになるための時間に充てること。現地の方とのゆるやかなコミュニケーションの先には、人生を変えるような出会いもあるかもしれない。
久保利さんのホテル暮らしの視点に、多くのことを学ばせてもらったような気がします。
(写真提供:久保利彩 Instagramはこちら)
櫻井朝子
三宅朝子
goodroom journal 編集部所属。ライター、バーのママなど、いろんなことをしています。行ったことのない街に降り立つととにかく興奮する、街歩き大好き人間。最近リノベマンションに引っ越したばかりなので、街だけでなく、室内の住環境を整えていくことにも興味津々。部屋中無印。