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好きな街で、気ままなホテル暮らし。あえて一人暮らしを選ばなかった理由って?-ホテル暮らし経験者・マロさんへインタビュー

これからの賃貸暮らし Vol.01

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好きな街で、気ままなホテル暮らし。あえて一人暮らしを選ばなかった理由って?-ホテル暮らし経験者・マロさんへインタビュー

新しい暮らし方を実践している方々に話を伺うインタビュー企画、はじまります。今回は東京都内でホテル暮らしをしている、マロさんにお話を伺いました。

text : ASAKO SAKURAI

場所を選ばず仕事ができるようになってきたことで、これまでよりもっと、私たちの働き方や住まい方は自由になっていくはず。

2拠点居住、地方移住、定額住み放題、ホテル暮らし……

最近様々なサービスが出てきて興味はあるけれど、どこかまだ他人ごと、という方も多いかも。

でもちょっとだけ、気になりませんか。実際にそんな新しい暮らし方をしているあの人のこと。

グッドルームジャーナルでは様々な暮らし方をして、日々を心地よく送っている方々にお話を伺い、「これからの新しい賃貸暮らし」を考えます。

第1回目の今回は、平日限定で都内のホテルを転々としながら暮らす、マロさんです。

マロさん・プロフィール

東京都練馬区の実家を拠点として、土日は実家、平日は都内でホテルステイをして暮らす28歳女性。2019年3月よりホテルステイをスタート。運営する「ひとり時間を楽しむ」をコンセプトにしたInstagramアカウントのフォロワー(@ohitorigram)は、現在1.7万人を超える。

東京都練馬区の実家を拠点として、土日は実家、平日は都内でホテルステイをして暮らす28歳女性。2019年3月よりホテルステイをスタート。運営する「ひとり時間を楽しむ」をコンセプトにしたInstagramアカウントのフォロワー(@ohitorigram)は、現在1.7万人を超える。

「都内一人暮らし」に実感を持てなくて始めた、ホテル暮らし

ー今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございます。さっそくですが、マロさんがホテル暮らしを始めたきっかけって、どんなことがあったのでしょうか。ご実家も都内にあるのに、なぜ始めようとおもったのか

マロさん:
実家を出たことがなかったので、ずっと前から一人暮らしをしたいなぁと考えてはいたんです。

でもいざ住む場所を探そう、と思っても、他の場所で暮らしたことがなかったのでピンときませんでした。また「せっかくなら素敵な部屋で」と思っても、なかなか思い通りの空間の部屋が見つからなかったんです。

さらに「できれば家事をしたくなかった」ということもありますね。

そんな虫のいい話あるわけないよなぁと悩んでいた時に思いついたのが「ホテルで暮らす」という方法でした。

ホテルを転々として暮らしたら、場所もそのときの気分で自由に好きなところを選べるし、空間づくりにこだわっている場所も多い。さらに家事はしなくても良い! ホテルだったら、私の抱えていた課題がすべてクリアできると思いましたね。

本当は毎日ホテル暮らしをしたいところですが、両親が土日くらいは顔を出してほしい、と言ってくれているので、現在は平日の月曜~金曜までの4連泊、ホテル暮らしをしています。

ホテル選びの基準は「ここで自分が暮らしている」イメージを持てるかどうか

ー都内のホテルといっても、チェーンのビジネスホテルや個人経営のホステルまで、様々な場所がありますよね。マロさんのホテル選びの基準のようなものって、あるんでしょうか

マロさん:
職場が港区なので、そこから電車で40分~1時間以内で通えるところ、また1泊1万円以内で泊まれるところ、ということを基本的な条件としています。

あとは「行ったときに、自分がそこで暮らしている」という想像ができるかどうか、を大切にしていますね。

例えば周辺地域。カフェやレストラン、パン屋さんなどの飲食店を含めた街の雰囲気を見ています。ここで自分が一定期間滞在して、どんな過ごし方ができるかな、ということをイメージしてから行くんです。

また最近は在宅ワークになったことで、普通の方と同じように、部屋の中で過ごす時間が増えています。そんなとき、こだわりの家具で揃えられている空間になっているか、長時間いても落ち着く空間であるかどうか、なども考えています。もともとインテリアがとても好きなので、普通では買うことのできないような家具が置いてあるホテルはとても好きですね。

もともとインテリアがとても好きなので、普通では買うことのできないような家具が置いてあるホテルはとても好きですね。

日本橋にあるホテル「K5」。ベッドの周りを覆うのは、藍色に染められたカーテン。高さ4.5メートルもある開放的な空間で過ごせます。

カフェラテを片手に、新宿御苑公園の芝生で寝転んだり。

時にはカフェラテを片手に、新宿御苑公園の芝生で寝転んだり。

例えば周辺地域。カフェやレストラン、パン屋さんなどの飲食店を含めた街の雰囲気を見ています。ここで自分が一定期間滞在して、どんな過ごし方ができるかな、ということをイメージしてから行くんです。

時には一人でバーヘ繰り出すことも。写真は日本橋浜町のバー「Vineria IL Passaggio」

朝の楽しみが豊富。早起きが苦にならなくなった

ーマロさんが実際に、ホテルを起点にどんな生活をしているのか、気になっている方も多いと思います

マロさん:
現在は出社をしなくても良くなったので、基本的にはホテルの中で仕事をしています。

それ以外には朝はホテルの周辺を散歩したり、ジョギングをしたりして、街を楽しむようにしています。在宅ワークになったことでランチもホテル周辺でとれるようになったこともうれしいポイント。

基本的にホテルにいる間はすべて外食です。どうしても時間がないときはスーパーや近所のお店でテイクアウトをすることもありますね。

またホテル暮らしでのいいところは、朝早起きすることが億劫でなくなったことです。

ホテルにあるカフェでモーニングを食べたり、街を散策したり、ホテル内のベーカリーショップで買ってきたパンを食べたり……。

私はここで「暮らしている」という感覚なので、普通の生活といい意味で変わりません。ですがいい空間、好きな街で暮らしているということもあって、実家にいる頃よりも、生活のクオリティが上がっている、と感じています。

緑がある店内でいただく、絶品モーニング「CAVEMAN」。マロさんのInstagramを眺めていると、早起きをしてモーニングを楽しみたくなるお店がたくさん紹介されています。

緑がある店内でいただく、絶品モーニング「CAVEMAN」。マロさんのInstagramを眺めていると、早起きをしてモーニングを楽しみたくなるお店がたくさん紹介されています。

「近所にあったら毎日でも買いに来たい!」ほどマロさんがお気に入りのパン屋さん「BEAVER BREAD」

「近所にあったら毎日でも買いに来たい!」ほどマロさんがお気に入りのパン屋さん「BEAVER BREAD」

パークビュー、リバーサイド……眺めの良い場所の近くにいることが、心地よさを生むと気づけた

ーこれまで泊まった都内のホテルは30近くあるというマロさん。中でも特に居心地の良かったホテルを教えてください

マロさん:
これまで何度もリピートしていて特に気に入っているホテルは3つほどあります。

西新宿「THE KNOT TOKYO Shinjuku」

一つ目は、西新宿にある「THE KNOT TOKYO Shinjuku」です。

こだわりのあるインテリアがたくさんあって、見ているだけで勉強になります。特に私が宿泊した部屋にあった椅子は、一人暮らしだったら買えないような高価なもので、椅子ひとつでこんなに座り心地が違うのかと驚きました。そこに座りながらすぐそばにある新宿中央公園を眺める時間は格別ですね。

またラウンジなどの共有の空間もとても良いんです。気分転換にここで仕事をすることも。外国の方や出張で来ている方、多くの方がいらっしゃったので「ここが街の起点になっているんだな」と感じましたね。

天井の高い、ラウンジ空間。

天井の高い、ラウンジ空間。

デンマークの家具デザイナー、フィン・ユールの「ペリカンボタンチェア」から公園を眺めます。

デンマークの家具デザイナー、フィン・ユールの「ペリカンボタンチェア」から公園を眺めます。

日本橋浜町「HAMACHO HOTEL」

二つ目は、浜町駅近くにある「HAMACHO HOTEL」。

ここは、”日本橋浜町”という街が気に入っています。

ホテル側もここを拠点に「街を楽しんでほしい」というスタンスでいるので、隅田川周辺をジョギングしたり、雑貨屋さんを見たり、カフェでお茶をしたり、夜ご飯を食べたり……そんな風に散策して、この街を楽しんでいます。

インテリアもシンプルなんだけれど、周りに緑も多く、心地良いんですよね。本当に「旅するように暮らす」という、思い描く暮らし方が実現できているなぁと感じます。

そしてこのホテルが素晴らしいのは、接客です。全員に向けてサービスをしているというよりは、個人個人でお客様に合わせてサービスややり方を変えている、という印象があります。あまりぐいぐい来られても嫌だし、そっけなさすぎても少し寂しい。そんな宿泊者との距離感が絶妙なことも、私がここのホテルをリピートしている理由かもしれません。

大きな窓があり、開放感のあるラウンジスペース。

大きな窓があり、開放感のあるラウンジスペース。

小さなテーブルもあるので、デスクワークにも最適。

部屋には小さなテーブルもあるので、デスクワークにも最適。

清澄白河「LYURO」

最後は、清澄白河にある「LYURO」。

ここは隅田川沿いに建っているので、部屋の中、しかもお風呂に入りながら川を眺めることができるんですよ。

貸出テレビや、お風呂用のバス枕なんかもあるので、ゆっくりお風呂で過ごすことができます。私はここに貸出のスピーカーを持って行って、音楽をかけながらのんびりする時間が好きですね。

川から連想して、建物や部屋などの室内全体がブルー系のインテリアで統一されていることも、落ち着きがあって好きです。

いろいろこうして振り返ってみると、「パークビュー」「リバーサイド」など、都内でも自然がそばにある空間が好きなのかもしれないですね。

ドミトリーを除き、ほぼ全室隅田川が一望できる室内。コンパクトなお部屋でも、開放的な気分になることができます。

ドミトリーを除き、ほぼ全室隅田川が一望できる室内。コンパクトなお部屋でも、開放的な気分になることができます。

廊下の壁紙まで、ブルー一色。

廊下の壁紙まで、ブルー一色。

細部にまでこだわったインテリアの数々。

細部にまでこだわったインテリアの数々。

決して安くはない。でも普通の賃貸生活ではできない体験が待っている

ーホテル暮らしをしていて、一番良かったことってなんでしょう

マロさん:
自分の人生を、学びや気づきでいっぱいにできる、ということでしょうか。

先日、池袋にある「SIRO」というホテルに泊まった時のことです。ベッドのマットレスがテンピュール社製で、自分の心地よいと感じる角度にリクライニングできるものを使用していました。

翌朝起きた時、「マットレス一つで、こんなに睡眠の質が変わるのか」と驚いたんです。かなり高価なものですので、なかなか一人暮らしではできないことだったのかな、と思います。

それからいいインテリアや景色がいいところにいると、それだけで美意識が上がるというか。

自分がどんなものが好きなのかという価値観、インテリアを考える上でこだわるべきこと。ホテル暮らしをしていると、そういう多くの学びや、気づきがあります。また、私にとってホテルは、そういった新たなライフスタイルを提案してくれる場所でもあるんです。

さらに、私は生まれてからずっと実家住まいだったので、東京の街のことをあまり知らなかったんです。こういった生活にシフトしてからは、東京のいろんな街の顔を知れました。生まれた場所だからほとんど関心をもったことはなかったんですが、東京ってすごく楽しい場所なんだなって改めて気づけましたね。

今では様々なエリアに、大切にしたいホテルがたくさんできました。私の好きなホテルは街の”メディア”のような機能を持っていて、ホテルを起点に街の散策を楽しむことができる場所が多いんです。

だからこそ、

「このホテルに行ったら、あそこの店に行こう」
「あのホテルに行ったら、もう一度会いたい人がいる」

そんな風に、東京都内にセカンドホームというか、「帰りたくなる場所」がたくさんできたということは、とてもうれしいですね。

ーその価値観は、ただ遊びに行くだけでなく一定期間滞在する「泊まる」という行動があるからこその感想で、とても素敵です。ちなみにもし一人暮らしをしていたら、と考えると、その違いはどんな所にあると思いますか

マロさん:
私の場合、ホテルに行く前後で荷物を準備しなければいけなかったり、キャリーケースを持って都内を移動しないといけなかったり、という多少の不便さはありますが、それほどデメリットだと思っていません。

また、1泊1万円を平日の4泊分、と考えると、月にだいたい16万円ほどかかっているのですが、それは賃貸で一人暮らしをするよりもやや高い金額だと思います。

ただ初期費用がかからない、インテリアを揃える費用がかからない、というメリットはもちろんのこと「こだわりぬかれた場所に身を置く」ということに私は価値を感じています。

これほどのいい空間というのは、知識やお金がないと決してできない、ホテルならではの魅力ではないですかね。

*

「ホテルは”旅をしたときに帰って寝るだけのための場所”というイメージを変えたいんです」

そう、最後に力強く答えてくれたマロさん。

東京にいるのに、東京のホテルに泊まるというのはもったいない。そんな声も聞こえてきそうですが、ただ”寝る”場所でなく、”暮らす”という体験を通じて得られるものは、こんなにも多いのかと、取材をしてみて改めて実感しました。

まずは1泊、ホテル暮らしを体験してみたら……。

「東京に住みながら、旅をしている気分」という経験は、これからの自分に何か新たな気づきをくれるのかもしれません。

マロさんに聞いてみた!ホテル暮らしのアレコレ

ここからは一問一答、マロさんにいろんな質問をぶつけてみました!

Q:荷物はどのくらいの量を持ち運びしていますか?

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A:
主に中くらいのキャリーケースを活用しています。荷物は、多くが洋服、化粧品ですね。洋服は大好きなのでたくさん持って行きますが、他にはあまりいろいろと持ち歩かないようにしています。

ホテルにもシャンプーなどのアメニティは充実しているので、そういったところでも「ホテルを楽しむ」というスタンスを大切にしています。

Q:洗濯はどうしていますか?

A:
実家に帰ったときにまとめて行っています。

ただ今は洗濯の代行サービスなどもあるようなので、今度試してみて、完全にホテル暮らしになった時にも対応できるように準備しておきたいな、と思っています。

Q:ホテル暮らしをするうえでのマストアイテムはありますか?

A:
エアミストです。今使っているのはAndazのAir Mist「Summer Bamboo」です。夏らしい爽やかな竹の香りが気に入っています。

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自分が心地よいと感じられる香りはホテルにも持ち込んで、より居心地のよい空間になるよう工夫しています。

Q:一か月あたりの費用はどのくらいですか?

A:
1泊1万円と決めているので、平日4泊×4週で、ざっと計算して16万円です。

それ以外に外食代がかかってくるイメージです。

写真提供:マロさん

三宅

櫻井朝子

三宅朝子

goodroom journal 編集部所属。ライター、バーのママなど、いろんなことをしています。行ったことのない街に降り立つととにかく興奮する、街歩き大好き人間。最近リノベマンションに引っ越したばかりなので、街だけでなく、室内の住環境を整えていくことにも興味津々。部屋中無印。

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