こんにちは、日用品&町歩き愛好家の渡辺平日です。この連載では、個人的に好きな町や住みたい町を、商店街を中心にじっくりと這うように案内しています。
第16回目となる今回は東長崎を紹介していきます。東京都豊島区の西側に位置するエリアで、九州の長崎とはまったく関係がありません。
もともとこの一帯は古くから「長崎」や「南長崎」と呼ばれていました。駅を新設するにあたり、九州の長崎駅との混同を防ぐため、東京にある長崎ということで「東長崎駅」と名付けたそうです。
ちょっと言いにくいのですが……少なくとも遊びに来るタイプの町ではありません。大きい商業施設や有名な観光地もなく、急行電車も停まらないため、立ち寄ったことがないばかりか、今回はじめて知るという方も少なくないはず。でもですね、実はとっても生活しやすい穴場エリアなんですよ。
駅構内の様子。10年程前にリニューアルしたそうでなかなか綺麗です。ちなみに、駅舎の屋根に鐘が設置されているのですが、これは長崎市の「アンジェラスの鐘」を模したもの。なんだかんだで縁がありますね。そのうち姉妹都市になったりして……。
アクセス面をチェック
「いくら穴場といっても、移動の便が悪いんでしょ?」
もしかしたらそう思われるかもしれませんね。そのあたりはどうなのでしょうか。
東長崎駅には西武池袋線が乗り入れており、池袋駅にはわずか4分程度で移動可能。池袋駅では山手線や埼京線、副都心線など8路線が利用可能で、一度そこまで出ればどこに行くのにも便利です。
いったいどのくらい便利なのか。池袋駅からほかのターミナルステーションへの所要時間を確認してみましょう。新宿駅へは最短でなんと約5分。ほか、渋谷駅へは約15分、東京駅へは約16分と主要駅へ短時間でアクセス可能。乗り換えの時間があるため実際にはもう少し掛かりますが、それにしても素晴らしい交通利便性です。
駅周辺にはマクドナルドやCoCo壱番屋、鳥貴族などチェーンの飲食店が点在。帰りが遅くなった日には助かりそうです。右手にレトロな交番が写っていますが、実はこれ、2019年に建てられたばかりなんですよね。なんでも漫画家の聖地「トキワ荘」をイメージしているのだとか。
駅の近くには東急ストアと西友が、少し離れた場所にサミットもあります。コンビニも数軒あるので日常的なお買い物には困りそうにありません。
魅力たっぷりの商店街
それではさっそく町歩きスタート。まずは商店街をチェックしてみましょう。
合計6つの商店街がある東長崎エリア。実に歩きがいがあります。おっ、元気な青果店を発見。
建物自体もメロンみたいでキュート。
老舗精肉店「肉の天野屋」。なんて良い店構えなんだ! ……写真を見ていて気がつきましたが、中央付近にある秤は柳宗理さんの作品ですね。今から50年以上前にデザインされた名作で、当時はこの秤を使うことが一種のステータスだったそうです。
しばらく悩んでコーンコロッケを注文。ほかのはよく見かけるけど、とうもろこしのコロッケってちょっとめずらしい気がします(素朴でほっこりする味でした)。
他にも美味しそうな惣菜店がたくさん! 自炊をお休みしたいときや宅飲みするときに重宝しそうです。
さらにさらに、和食出身のオーナーが切り盛りする「麺屋 清」や……
個性的なメニューが自慢の「オリオン食堂」などなど、外食の選択肢は非常に豊富です。
レトロな喫茶店でアイスコーヒーを
飲食店の多い東長崎エリア。とりわけ、喫茶店やカフェの充実具合には目をみはるものがあります。
ボリューム満点の日替わり定食が名物の「コーヒー庵」。このレトロで味のある外観、たまりませんねえ。豆知識ですが、浪人時代の山下達郎さんがその昔、このお店の近所のレコード屋でバイトしていたそうです(いまは駐車場になっています)。
手頃なプライスで上質なコーヒーが楽しめる「CREOLE COFFEE STAND」。オーナーが海外から買い付けてきたレコードも販売しています。
2018年にオープンしたばかりの「ひかるコーヒ(コーヒーではなくコーヒ)」。焙煎したてのコーヒー豆を買い求められます。
ちょっとマニアックなところでは「P-WOSH」というフィットネスクラブの中の「カフェ ファイン」というお店も気になっています。施設内にあるこの手のカフェってわりにザッとしていることが多いのですが、このお店はメニューがけっこう凝ってるし、外から見た感じ居心地もなかなかに良さそうです。
熟考の末、今回は「珈琲 オリーブ」へ行くことに。
地元の人々の憩いの場となっている老舗喫茶店です。
どうですか、この内装! 実にレトロです。
食事メニューはやや少なめですが、コーヒーやドリンクメニューはかなり充実しています。
1月にしては暑かったのでアイスコーヒーを注文。うーん、これぞ喫茶店だ。
店内に「ポパイ」と「オリーブ」の人形が飾られていました。もしかして店名の由来なのかと思って尋ねたところ、「常連の方がプレゼントしてくれたもので、店名とは無関係なんですよ」とのことでした。
レトロな金物屋でお買い物
駅からしばらく歩いたところに金物屋が。ううむ、この佇まい。お宝が眠っていそうな気がします。
軽家具からお鍋のフタのつまみまで、家で使う道具ならだいたい揃います。
特にですね、キッチン用品の品揃えが充実していました。雑貨屋で扱っているようなデザイン性の高いアイテムも魅力的ですが、こういう実用性に優れた道具にも強く惹かれますね。
今回は瀬戸物の灰皿を購入しました。この美しさたるや……思わぬ掘り出し物です。
レトロといえば。このエリアには味のある店舗が非常に多く、建物を眺めているだけでも楽しいです。
金物屋のお母さんによると、もう営業していないお店も少なくないのだとか。時代の流れとはいえ残念な話ですね。うまくリノベーションすればかなりカッコいいお店になりそうですが。
最後に「南長崎はらっぱ公園」へ訪れました。遊具ではしゃぐ子ども、ベンチで語り合うカップル、凧揚げを楽しむおじいちゃん。平和そのものです。
春が楽しみ。桜並木の見えるお部屋(1K/20.27㎡/7.5万円)
続きましてお部屋紹介のコーナーです。今回は「グリーンビュー」が自慢の一室をご紹介。マンションのすぐ近くに桜並木があり、お部屋に居ながらにして花見を楽しめます。どうしても景色に目が行ってしまいますが、内装もなかなか素敵な仕上がり。特にキッチンと洗面台のデザインが好みです。
さいごに
東長崎、とってもいい町です。ご覧のとおり特別な施設やスポットはありませんが、このエリアには形容しがたい魅力があるんですよね。どこにでもあるようで、どこにもないというか。
もし「気になるよ」という方はぜひ遊びに行ってみてください。きっと暮らしてみたくなるはずです。そうそう、美味しいお店がいっぱいあるのでお腹を空かして行くのをお忘れなく。
寄り道しながら駅に戻っているときに「全昌院」というお寺を発見。
「住職の顔が見えるお寺」を目指しているとのことで、精進料理教室や映画鑑賞会などを開催しているそうです(めちゃくちゃ面白そう)。もっともっと寄り道をしてこの町を知っていきたいな。