こんにちは、日用品&町歩き愛好家の渡辺平日です。この連載では、個人的に好きな町や住みたい町を、商店街を中心にじっくりと這うように案内しています。
今回は世田谷区の若林を散策しました。なんだか名字みたいな地名ですね。人名が由来なのかと思って調べたところ、〈土地が開発されて若い林が並んでいる様子〉を意味する名前であることが分かりました。ぜんぜん関係なかった……。
そんな若林の東には穴場駅として注目されている西太子堂、そして〈住みたい街ランキング〉常連の三軒茶屋。西には文化の発信地として盛り上がっている松陰神社前もあります。人気エリアに挟まれているせいで若林にスポットライトが当たることはまれですが、実は住むのにはかなりいい町なんです。今回はその魅力をじっくり紹介していきたいと思います。
渋谷方面へのアクセス抜群。二子玉川方面にも出やすい◎
駅には三軒茶屋駅と下高井戸駅を結ぶ世田谷線が乗り入れていて、三軒茶屋までは約4分。電車に乗ってぼんやりしていたらもう到着という距離感です。その気になれば歩いて行けますし、自転車があればもっと気軽にアクセスできますよ。
駅は非常にコンパクト。町全体にのんびりした空気が流れています。
三軒茶屋から田園都市線に乗り換えれば渋谷まで約5分。うーん、近い! さらに、商業施設が集まる二子玉川までは約6分。まとまったお買い物をしたいときも困りそうにないですね。ただし、世田谷線から田園都市線の乗り場まではけっこう距離があるので、特に急いでいるときはお気を付けくださいね。
環七通りを歩いて若林へ
いつもは駅周辺から散策しますが、今回はちょっと趣向を変えて、駅までの町並みから紹介していきます。
若林駅の近くには環七通りという主要道路が通っていて、それが少なからず町の形成に影響しているはずだと考えたからです。「大通りを歩かないことには、若林を知るのは難しい。だから歩くのだ」というとちょっと大げさですけど、そこを眺めることでまた違うものが見えてくると思うので、ジワジワと歩いてみようと思います。
今回は東急東横線の学芸大学駅から環七通りを北上するルートを選択。
こういう道がずっと続きます。いつもは細っこい路地を歩くのでちょっと新鮮です。これもひとつの風景だなあ。
大きい道路の構造に惹かれる。
複雑な道路標識。(そうか。このあたりは交通要所なんだ)という当たり前のことに気付かされます。世田谷線ってのんびりしているから、なおさら忘れちゃうんですよねえ。
あっ、歩道橋がありますね。ちょっと上ってみましょう。
お~気持ちがいい。このままどこかに行ってしまいたくなります。
そんな感じでテクテク歩いていると、突如、生活感のある通りがあらわれます。ここは若林中央商店会という商店街で、この先に若林駅があります。
のんびり、おだやか。若林駅周辺を散策しました
おお、いいY字路ですねえ。
一軒家を改装したクリーニング屋。ロゴがかわいい。
反対側にはもみじ部屋という整体があります。いいですね、このゆるーい雰囲気。さっきまでの喧騒が嘘みたいです。
駅に到着しました。おや、あれは……?
これは世田谷線の運行50周年を記念してデザインされた〈幸福の招き猫電車〉です。床に猫の足跡があったり、吊り手が招き猫の形なっていたりと非常に凝っています。沿線に招き猫の発祥地といわれている豪徳寺駅があることにちなみ、このデザインを採用したそうです。超レアというわけではありませんが、見かけるとちょっと嬉しい気持ちになります。
商店街をブラブラ
それでは引き続き、若林中央商店会を散策します。
踏切を超えてすぐのところにスーパーがあります。店内をじっくり見てみましたが、野菜がかなり充実していて、肉や乳製品もなかなかの品揃え。魚介類がちょっと薄いかもと感じましたが、これはお店の規模を考えると仕方ないかな……。とにかく、このスーパーがあれば基本的なお買い物には事欠かないと思います。
店頭では焼き芋を販売中。秋ですねえ。
そのほか、コンビニやパン屋、唐揚げ屋などもあります。
個人的に嬉しいなと思ったのが、駅のすぐ近くに郵便局があるところ。かなりの高得点です。
ところで、この郵便局はマンションの1階にあるのですが……
郵便局に因んだであろう名前が付けられていてかなり良かったです。
さらに北側に進んでいくと……
喫茶サロン〈ことたりぬ〉が見えてきます。古着や雑貨などの販売やチラシのデザイン、Illustratorの教室、金継ぎのワークショップなどをやっている店舗です……といってもピンとこないですよね。とってもユニークなお店なのでぜひ一度立ち寄ってみてください。ほんと、面白いですよ。
老舗のクリーニング屋。台車が大活躍しています。
さらに歩みを進めるとレコードと古本のお店〈十二月文庫〉が見えてきます。じっくり吟味し旅行記を1冊購入。
さらに進むと環七通りに繋がる道に出ます。このあたりで引き返しましょうか。
緑道で、ホッと一息
商店街の途中に緑道があります。前から気になっていたのでフラッと散歩してみました。
〈烏山川緑道〉というそうです。三宿と千歳台を結ぶ約7キロの緑道で、その途中には松陰神社や豪徳寺など由緒ある神社仏閣が点在しています。お休みの日には歴史散歩を楽しむのもよさそうですね。
彼岸花が燃え盛っていました。いやあ、秋ですねえ。
レトロな喫茶店で読書の秋
町歩きの最後に、前から気になっていた喫茶店へ行くことにしました。いい店構え。
うーん、内装が渋い! ついニコニコしてしまいます。
時間に余裕があったので、先ほどの古本屋で購入した本を読むことにしました。この辺りに住んでたら、休みの日はこういう過ごし方をしたいですね。
読書とコーヒーを楽しんでいたら日が暮れてきたので町歩き終了。続いてはお部屋紹介のコーナーです(特に2件目が気になります……内見に行きたいな)。
のんびり一人暮らし。キュートなキッチンがある1R(1R/25.63㎡/8.3万円)
ややゆとりのある設計の1R。レトロなミントグリーンのキッチンが可愛いですね。水回りがしっかり独立しているのもポイント。
新築には出せない味わい。世田谷のヴィンテージ・ルーム(1LDK/38㎡/10.5万円)
松陰神社寄りですが、こんな素敵なお部屋もあります。それにしても、ビートルズが活躍していた時期からずっとあるなんて……ロマンを感じずにはいられません。
さいごに
こういう〈生活のにおい〉のする町が僕は好きです。いつ訪れても穏やかで、(こんな町に住みたいんだ)と思います。特に今回は大きな道を歩いてきたので、いつもよりもそう感じました。
それにしても、あんなに大きな道路があるのに、どうしてこんなに落ち着いているんだろう? 今までなんどか同じような立地の町を見てきましたが、もっと賑やかだったり騒がしかったりで、ずいぶんと様子が違います。 もっと若林について知りたくなってきました。
それではまた、次の住みたい町でお会いしましょう。
帰りも徒歩で。町歩きって、ほんと楽しいなあ。