TOMOS リモートワークに徹する
1R(25.23㎡)
「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞きます。
「団地の最大のメリットは、日当たり、風通しの良さ」と、団地家の吉永健一さん。抜群の日当たり、風通しを確保するために知恵を絞った、団地の工夫を教えてもらいました。
text & photo : Kenichi Yoshinaga
団地と言えば、採光と通風のよさが最大のメリットです。
これは、戦後、近代的で健康的な生活と住まいを広めるという大きな使命を団地が持っていたためです。
そのため、戦後の住宅難を解決するために建てられたにも関わらず、あえてみっちり建て込むのではなく、通風採光の確保が徹底されました。
建物と建物の間の距離が十分にとられているため、風は抜けていくし、日当たりも抜群なのです。
間取りも工夫されました。
まずはスタンダードな間取りから見ていきましょう。
和室、台所はもちろんトイレ、洗面所、浴室に至るまですべてに窓があります。一般的な3DKマンションで水周りに至るまで窓があるのは珍しいのではないでしょうか。
特に注目してほしいのは和室1、2とDKが壁ではなく襖で仕切られていることです。ここを開け放てば南北に風の通り道ができます。
もっと窓をたくさんつけたいと追求してできたのが、ポイントハウスと呼ばれる住棟です。
特にスターハウスと呼ばれるタイプは、その特徴的な外観から団地好きの間では人気のある住棟です。
住戸の三方向に窓がとれるように間取りと階段の位置が工夫されています。
ただし、通風採光のための窓をなるべくたくさん設けようとするあまりかえって使いにくい間取りになることもあったよう。スターハウスでは窓がたくさんありすぎてタンスが置けなくて困ったのだとか。
前回紹介した高層団地の場合、玄関側にはエレベーターまでつながる廊下が通ります。
廊下側の窓は開けっぱなしにしにくいものです。これではせっかく窓があっても風を通すことができない……そんな問題を解決する技が団地にはあります。
廊下と住戸の高さを絶妙なレベルでずらして、窓が廊下に面しないようにするスキップフロアです。
これならば何の気兼ねなく窓が大きく開けられます。
日当たりのよさをさらにいかすためサンルームを設けた団地もあります。
もっとも気持ちよさそうなタイプは関西の公団住宅で採用されたサンルーム型住戸です。
ちょうど古い旅館の窓辺のようにサンルームが設けられています。床から天井、壁の端から端まで目一杯の大きさに窓が取り付けられ、開放すると空気が通じ合ってほぼ外部バルコニーと同じような状態になります。夏には縁側、冬には温室のような空間になっていたことでしょう。雨の日の洗濯にも重宝したに違いありません。
サンルームつきの住戸は数が少ないのですが団地住まい予備軍のあなたへ vol.3でお話しした市街地住宅の多くにサンルームが設けられています。
団地に訪れると、やはり住まいには光と風が必要なんだと実感します。人工的な環境でも快適ですが自然の光と風には独特の心地よさがあります。そんな気持ちよさが素で手に入るのが団地なのです。
吉永健一
吉永健一
団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。