部屋の真ん中にお風呂がある、早すぎた団地マニアの部屋
「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞く連載「#団地の暮らし方」。 今回は、約20年前に団地を購入、セルフリノベーションして住んでいる「早すぎた団地マニア」BADONさん夫婦のお部屋におじゃましました。…
「団地」の価値を見直し蘇らせる再生プロジェクトが、全国で始まっています。「いま、団地に暮らすってどんな感じなんだろう?」リアルに団地に暮らすひとびと、団地に関わるひとびとにお話を聞く新連載「#団地の暮らし方。」、今回は”団地家”の吉永健一さんに、「団地住まい予備軍のあなたへ。」と題して団地に暮らす楽しさをデータをひもときながら教えてもらいますよ。
ここ数年住まいとしての団地が再評価されています。
私は団地専門の不動産サイト団地不動産を運営していますが、いままで100組ほど団地に住みたい!というお客さんをお世話してきました。また、団地住まいの友人もたくさんいます。今回はその経験から、いま住まいに団地を選ぶ人たちはどのような層なのかお話していきましょう。あれ?これってわたしのことでは?!と気が付いてもらえれば幸いです。
※ここではおもにUR都市機構、地方住宅供給公社および分譲団地を対象とします。
新居を探すもなかなかしっかりしたお部屋に出会えていないあなた!団地を選択肢から外していませんか。
団地不動産にコンタクトしていただいた方の件数を年代別にまとめると30代がもっとも多く(54 %)、続いてほぼ同率で 20 代、40 代、 50 代と並びます。高齢化が問題となりがちな団地に最も住んでもらいたい世代である 20,30 代をあわせると6割を超えます。団地=高齢化=高齢者が住むというイメージがありますが若者に人気がないというわけではないのです。
家族構成はどうでしょう。団地=家族で住むというイメージがありますが一人暮らしのために団地を選ぶ人が4割近くいます。団地不動産の問い合わせの中で一番多い層は女性の一人暮らしです。女性のお客さんから聞いた話によるとURは対応するのがほとんど女性職員 、一般の不動産屋ような強引なセールスはしてこない、という点で安心なのだとか。
団地マニアとか団地好きな人いるよねーとか、団地しか住めない人もいるしねーと他人事のように思っているあなた!そんなあなたも実は団地住まい 予備軍かもしれません。
団地不動産ではお客さんに『団地がどの程度好きか』を必ず聞いています。もちろん「大好き」と「好き」が多いのですが「好きというほどではない」も 3 割程度います。団地を選ぶ理由を尋ねると8割近くが「団地が好きだから」以外の理由です。最も多いのは今と同じくらいの家賃でより広いところに住みたいからというもの。団地に住む人は団地マニアだから不便でも好きで住んでいるのではと思われているかもしれませんが、ノスタルジーや建物嗜好ではなく純粋に住環境として評価して住んでいる人の方が多いのです。
へーこんな人が団地を選ぶのか!といままで一番びっくりしたのはカントリースタイル好きの中で団地住まいが流行っているということ。カントリースタイル界のカリスマで毛塚千代さんという方がいらっしゃるのですが、その方のご自宅は草原の中の一軒家ではなく団地。自らの手でカントリー調のインテリアに改装しています。かたや鉄筋コンクリートでできたがちがちの団地、かたや手作りのものに囲まれたほっこりしたカントリースタイルは一見相容れないように見えますが、「自然の中でシンプルに暮す」という点では相性ばっちりなのです。毛塚さんに憧れて団地住まいをしている人もいるようです。
緑が一杯で、歩者分離でこどもを安心して遊ばせられるし、ほど良くコミュニティがあって、お部屋も通風採光がばっちりとは聞くけど、一方で悪い噂も聞くし……と思っているあなた!じつは団地こそあなたにフィットする住まいかもしれませんよ。
今あえて団地を選ぶ人たちと接して感じてるのは、かれらが「自分の暮らしに何が必要で何が必要でないか」の取捨選択がきちんとできている人たちだということです。シンプルに暮したい、でも何かを我慢するでもなく質素でありながら豊かで快適な暮しを送りたいという方に団地暮らしはあっているようです。例えば家具はIKEAや無印良品、家電は最小限でテレビや固定電話を持っていないという方も多いです。贅沢しなくても豊かな暮しを送ることができる、いわば暮しの達人たちが団地を選んでいると言ってよいでしょう。
自分は何を大切に思って暮しているのだろうか?と思い返すと実は団地ベストチョイスだった、という方は結構いるのではないでしょうか。今の住まいにちょっとでも違和感を感じている方、団地を選択肢に入れないことで暮し方と住まいのミスマッチングを起こしてはいないでしょうか。あなたこそ団地住まい予備軍かもしれません。
今回から始まるこの連載記事ではそんな予備軍の背中をトンッと押すお話を書き連ねて行きたいと思います。
吉永健一
吉永健一
団地に取り憑かれた建築家。
団地のリノベーション設計とともに団地専門の不動産屋「団地不動産」としてUR賃貸住宅のあっせん、分譲団地の仲介を行う。全国団地愛好家集団「プロジェクトD」メンバーとして団地の魅力を世に伝えるイベント企画出演、記事執筆もこなす。