海の向こうの作り手に思いを馳せて。『POST (恵比寿・東京)』
本も好きだけど、本屋はもっと好き。ずらりと並んだ本や雑誌の棚を眺めているだけでも刺激的だし、最近では、カフェを併設していたり、可愛い雑貨が売られていたり、面白そうなイベントを開催していたり、本屋で過ごす時間がどんどん楽しくなっている。そこで、2017年、あなたのお気に入りの本屋を見つけてみませんか。 (text : Miha Tamura / photo : Takuya Kanai)…
本も好きだけど、本屋はもっと好き。ずらりと並んだ本や雑誌の棚を眺めているだけでも刺激的だし、最近では、カフェを併設していたり、可愛い雑貨が売られていたり、面白そうなイベントを開催していたり、本屋で過ごす時間がどんどん楽しくなっている。そこで、2017年、あなたのお気に入りの本屋を見つけてみませんか。
(text : Ako Tsuchihara / photo : Kayoko Aoki)
窓から陽の光が差し込む明るい店内。白壁と手作りの本棚や木箱のカウンター。そこに並ぶ1つ1つの本の装丁が、まるで絵本の1ページのように鮮やかな色を放っている。東京にはアートブックを扱う書店は数多くあるが、ユトレヒトは、なぜか肩の力がフッと抜ける軽さがあって大好きな書店の1つである。
この日は、アーティストHasegawa Yuri さんの企画展を開催中。まずは壁一面に展示されたフエルトのぬいぐるみを眺めながら、いつも以上にゆるゆるした時間が過ごせそうな予感がする。
ユトレヒトにある本は、一般の書店であまり目にすることがないものが多い。年に1回(2016年は9月に開催)に開かれる「Tokyo Art Book Fair」の共同主催をはじめ、本にまつわるさまざまな活動を通し、国内外の大小問わず出版社とのネットワークがあるからだ。とくにアーティスト自ら制作・発行しているもの、小部数のインディペンデント系が中心で、いつ行っても作家の自由な表現に刺激される。
スタッフのひとり、黒木晃さんに、選書のコンセプトを聞くと、
「できるだけ作家さんの顔が見えるような書籍を選んでいます。ここを訪れた人が、こういう本があるんだ、面白いアイデアだなと触れ、いろいろな想像力が膨らむ、そんな本を選んでいますね」
小さな店内だけど、気づいたら数時間経っている。棚から棚への移動時間がついつい長くなってしまうのだ。
「棚や平台には、本と本との関係性やそれぞれの個性が見て取れるようにさりげなく並べています。お客さまが本を1つ手に取って眺め、それを置いた後、その横にまた繋がりがある本というように。それがゆるやかに広がっていって、アイデアが膨らめばいいなと思うんです」(黒木さん)
ブラッド・ピットが映画の中で食べている料理を再現した本、その傍に、いろいろな動物の背中にお酒を載せて撮影した写真集など、何故そんな本を作ったんだろう……などと思いながら、ずっと見ていたくなるのだ。
イスラエルの出版社が、2016年5月にパリで開催したエキシビション「BISOU MAGIQUE」のカタログを兼ねた作品集。擦り傷や小さな怪我をした子どもに母親がするおまじないのキスのように、子どもの記憶に確かな質感を持って残る何か…。そうしたテーマを元に6名の作家による作品が並ぶ。500部限定。3500円。
写真集やデザインブックなどはたくさん出版されているが、ここは、どちらかというとモノとして可愛い本がたくさんある。例えば、絵本のような厚紙のページに、大きいピンクのリング綴じが目を引く1冊。部屋にあったらいいな、と。
「最近は、自分たちで印刷や製本など本を作ることが手軽になっていて、様々な人が、自由に本を出しています。そんな中でも、ユトレヒトは、モノとしても可愛い、また、少し抜けていても発想の面白いといった本を置いているので、デザイン関係者だけでなく、誰でも気軽に楽しんでもらえると思うんです」
『Cooking with Scorsese』 Hato Press
ユトレヒトは海外の幾つかの出版社のディストリビューションをやっており、ロンドンの小さな出版社Hato Pressもその一つ。その出版社から出された「Cooking with Scorsese」は、印象的な食にまつわるシーンのある映画のキャプチャを集めたシリーズで、黄色が第一弾(1800円)、赤色が第二弾(1900円)。食欲をそそり、また想像力を掻き立てる魅力的なシーンがいっぱい。
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